2011年11月10日木曜日

キンベル美術館(まとめ1)


前回ブログ形式で順次書き足していったため、後からみるとよくわからないためまとめ直した(20111023)

ルイスカーン設計のフォトワースに建つ美術館。


この建物は、光をテーマにしており、いろんな人がいろんな論文でこの建物について書いている。建築論に関するもの、この建物の設計過程を調べたもの、ボールト天井の反射輝度の調査などありとあらゆる論文がある。
だが、ボールト天井がサイクロイド曲線で構成されていることは良く知られていても、なぜサイクロイド曲線なのかを書いた文章は見当たらない。

いろんな説があり、半円のボールトでは高さが高くなりすぎ空間も無駄だし、ヒューマンなスケールにならないとか、別の建物からのビスタを確保するために建物の高さを抑える必要があったからとかである。
確かにカーン自身が、“高さが高くないボールトは個人にとって適当なサイズでありホームにいるような安全な感覚になる”と答えている。(19731023日のKERA-TV Dallasのインタビュー)
しかし、高さを抑えるためならほかにも解決方法はいくらでもあったはずで、なぜサイクロイドか?には答えていない。
工藤国雄のルイスカーン論では、構造の要請からサイクロイド曲線を採用したとなっている。工藤氏はカーンの事務所にもいたことがある人なので、たぶん構造の要請というのは本当なのだろう。しかし、サイクロイドを使えとは構造設計者は言わなかったはずである。ボールトの高さを抑えてほしいくらいのニュアンスだったのではないだろうか?このボールト天井は中央にトップライトのためのスリットがあり単純なアーチ構造みたいに自立しない。ボールト形状の現場打ちコンクリートにポストテンションをかけて成立させている。100フィート離れた両端にしかない7m23フィート)スパン梁成が中央部で大きくなっていることからも構造的には相当大変なのだということが想像できる。だからと言ってサイクロイドでなければダメなのか?
この建物のテーマは光である。この建物の内部に入るとコーティング型枠で造られた艶のあるコンクリート打ち放しボールト天井全体が光って見える。
この光の演出とサイクロイド曲線は関係ないのであろうか?どこにもそのことに触れた文章は見当たらない。
ならば、シミュレーションで確かめてみることにする。
キンベルに行った時たくさん写真をとったが、デジカメがない時代で全てポジフィルムである。
上記シミュレーションのため、ポジフィルムをデジタイズしてモデリングの資料とする必要があるし、サイクロイド曲線の方程式から座標を計算しボールトをモデリングする必要がある。
1989年撮影になっているから20年以上たっている。撮影したカメラは不明だがダラスに持っていったのは確かオリンパスのカプセルカメラだったように記憶している。距離計連動カメラにしてはまあまあ良く写っていると思う。フィルムはエクタクロームのASA64

今回デジタイズに使用したのは、ニコンのクールスキャン3という機種で、ヤフーオークションで購入したもの。安かったので買ったが、スカジー接続でパソコン側に接続端子がなくそのままではつながらず、インターフェースボードも更に購入。しかし、ボードがこれまた古くvista用のドライバーがないので、OSxpにしたパソコンを用意してやっと接続できた。スキャン自体もすごく時間がかかるし、スキャンしたままのrawデータは現像処理の段階でデフォルト設定だとダイナミックレンジが低く使い物にならないので現像にまたまた時間がかかってしまった。一枚当たり1時間以上かかっていると思う。大変な作業だ。
(画像の解像度はブログのためかなり落としています。)




















エントランスキャノピーが、壁面に落とす影。光から沈黙へ





エントランスホールから前庭を見る。沈黙から光へ。
手前のオレンジの線はトップライトから、反射板をすり抜けた直射日光の筋


手前左にカフェテリアがある。手前右と奥が展示室。エントランス正面はミュージアムストアになっている。


カフェテリアと自然光が入る中庭


ミュージアムストアというよりブックストア。ここで“LIGHT IS THE THEME”という本を購入



トップライト見上げ(エントランス部分)

反射板を通して雲の移ろいが見える。
反射板には無数の穴が開けられていてすだれ効果で透けて見えるが、穴の密度は展示室とホールとでは変えられている。

分節されたボールトの隙間から見える外部。


カフェテリア前の中庭



エントランスホールから見た中庭。
“物質は光が燃え尽きたもの”というカーンの言葉がわかる気がする。




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