2010年1月6日水曜日

キンベル美術館

やっとというか今更というか、ついにルイスカーンを扱うことにした。特にこの建物は、光をテーマにしており、いろんな人がいろんな論文でこの建物について書いている。建築論に関するもの、この建物の設計過程を調べたもの、ボールト天井の反射輝度の調査などありとあらゆる論文がある。



だが、ボールト天井がサイクロイド曲線で構成されていることは良く知られていても、なぜサイクロイド曲線なのかを書いた文章は見当たらない。



いろんな説があり、半円のボールトでは高さが高くなりすぎ空間も無駄だし、ヒューマンなスケールにならないとか、別の建物からのビスタを確保するために建物の高さを抑える必要があったからとかである。



確かにカーン自身が、“高さが高くないボールトは個人にとって適当なサイズでありホームにいるような安全な感覚になる”と答えている。(1973年10月23日のKERA-TV Dallasのインタビュー)



しかし、高さを抑えるためならほかにも解決方法はいくらでもあったはずで、なぜサイクロイドか?には答えていない。



工藤国雄のルイスカーン論では、構造の要請からサイクロイド曲線を採用したとなっている。工藤氏はカーンの事務所にもいたことがある人なのでたぶん構造の要請というのは本当なのだろう。しかし、サイクロイドを使えとは構造設計者は言わなかったはずである。ボールトの高さを抑えてほしいくらいのニュアンスだったのではないだろうか?このボールト天井は中央にトップライトのためのスリットがあり単純なアーチ構造みたいに自立しない。ボールト形状の現場打ちコンクリートにポストテンションをかけて成立させている。100フィート離れた両端にしかない7m(23フィート)スパン梁成が中央部で大きくなっていることからも構造的には相当大変なのだということが想像できる。だからと言ってサイクロイドでなければダメなのか?



この建物のテーマは光である。この建物の内部に入るとコーティングされた型枠で造られた艶のあるコンクリート打ち放しボールト天井全体が光って見える。



この光の演出とサイクロイド曲線は関係ないのであろうか?どこにもそのことに触れた文章は見当たらない。



ならば、シミュレーションで確かめてみることにする。



その前に、ここは20年ほど前に行ったことがある。たくさん写真をとったが、デジカメがない時代で全てポジフィルムである。



少し前フィルムスキャナの中古をネットオークションで買ったのでこれからポジフィルムを順次デジタイズして資料とする必要がある。



それと、サイクロイド曲線の方程式から座標を計算しボールトをモデリングする必要がある。



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