2009年5月23日土曜日
方形の家
同じ面積(20m角)なのにたとえば外壁の面積はどうか?柱の数は?たぶん同じ面積の建物なのに、壁量や構造数量で建設コストは大きく変わってくるはずだ。
との思いから作ったモデルが下記だが、
中身がついてこない。いくらプランニングしても田の字プランになる。どうしても外観からくるシンメトリーから頭が離れない。で、思いっきり象徴的にしてみた。もはや数量検証のモデルではなくなってきている。
ここまでやって、別のアングルからみたモデルがこれだが、
この正面のイメージになんとなく見覚えがある。Déjà-vu というやつだ。何だろう?どう見てもお寺にしか見えない。“崖の上の家”で海に面した西面に大開口を創り西日の演出を考えたが、比較のために西面に作った大開口とお寺の形と西日が重なり、出てきた言葉が“西方浄土”、昔どこかで見たテレビ映像が浮かんでくるが思い出せない。
で、googleでいろいろ検索してやっと見つけた。
極楽山浄土寺浄土堂
兵庫県小野市にあるお寺。寺院建築にしては反りやムクリのない直線的な屋根、正方形平面をもつ、阿弥陀如来の仏像を安置するためのお堂だ。
記憶にあるのは、1987年にNHKで放映された “国宝の旅 浄土再現” という番組だった。
浄土堂は、阿弥陀如来、勢至菩薩、観音菩薩の3体を堂の中心に据えた仏像のための堂である。仏像の基礎が堂の床を貫通し建物の基礎と一体となり転倒を防いでいることからも、この仏像のために創られた堂であることは間違いない。しかも、光の演出が施され西方浄土を再現しているという。
是非その演出をCGで再現してみたくなった。
作ったモデルと写真を比べると柱割から違っている。
修正したモデルがこれ、
なんとなくそれらしいが、まったくイマージが違う。浄土堂は、東大寺南大門の構造と同じ大仏様という構造をもつ、建物自体が国宝の指定を受けている代物。しかしこの構造をモデリングするのはものすごい労力が必要。そもそも演出の対象である仏像のモデリングは、自分の力量では不可能に近い。
光の効果の再現という意味ではデフォルメもやむを得ないと思う。
それよりは敷地外の溜め池の位置や高さ関係、建物の方位、開口部の大きさ、屋根勾配などに注意をはらってもう少しブラッシュアップしていこうと思う。
浄土堂の断面と今回のモデルを重ね合わせた図。今回のモデルでは、光を反射する反射板としての機能を持つ化粧屋根裏が重要な演出要素になっているため小屋組や垂木を再現する必要がある。
以下 次回
2009年5月11日月曜日
崖の上の家
建物の構成について分節と分割をテーマに以前書いたことがある。
大きな一つの空間を用途ごとに区切る方法が分割
完結した一つの空間をつなげて建物の形態とするのが分節
自然景観にも分割がある。水平線・陸と海などである。
ある自然景観を考えてみた。海岸沿いで陸と海は断崖になってる。
太古の昔に地殻の変動により断層が動き陸側が隆起した地形だ。
午前中
午後
この風景の中にも、水平線と崖という分割線が存在する。
ところで、方形(ほうぎょう)を分割するとどうなるか?
方向は南北軸と東西軸
先ほどの景観の中に置いてみる
海からの見え方
陸からの見え方
方形を南北と東西の軸にそって分割し、東西は水平線、直交する南北は断層のメタフ
正方形平面を南北軸で2分割し少しずらす、それをもう一度東西軸にそって分割し少しずらす。できた平面がこの建物の平面。
それぞれの空間のインテリアは空間ごとに変化を持たせた。
1.東面 小さな窓から少し自然光が入るエントランス吹き抜けと2階ギャラリー空間
2.北面 自然光の入らない人工照明だけのギャラリー空間
3.西面 海に面した大開口があり自然光があふれるラウンジ空間(午後)
(夕日)
4.また小さな開口から少し自然光が入る2層を回遊するギャラリー空間(イメージなし)
1→2→3→4と順路を設定し、光の変化も楽しめる仕掛けとした。
平面を軸で分割し形態に取り入れた建物としてはPennzoil Placeがある。
ヒューストンにあるフィリップジョンソン設計のオイルメジャーの本社ビル。
長方形の敷地ををある軸で分割しツインタワーとしている。
平面図を見るまでこの建物がどうしてこんな形態なのか理解できない。格好はいいが、使い勝手はよくなさそう。
今回の崖の上の家ももしクライアントが居れば受け入れられるかどうか疑問が残る
。もう少しこの部分について考察してみたい。
単純な方形の建物に比べコストはどうか?
使い勝手はよいのか?
などである。コスト比較は難しいので、外壁面積の比較や構造数量(柱の数や梁の数)を比較してみようと思う。
2009年5月4日月曜日
二重らせん構造の博物館
二重らせんと聞いて最初に思い出すのはDNA。人間の遺伝子情報を記録した核酸だがその構造は一見しただけでは理解できないくらい複雑に絡み合っている。
しかし、構造を単純化してみるとわかるが、二重らせんといわれる所以はひとつのらせんともう一方が接することなく同じ方向にらせんを描いていていることだ。ここにある種がその種として生まれられる情報が詰め込まれている。
形態としては二重らせん構造の建物は存在する。会津さざえ堂などがそれに当たる。スロープを二重に配置し上がりと下りがそれぞれ別のスロープを使う構造の木造建築。どこか迷宮にも通じる構造になっている。
さざえ堂は昇ることを目的とした塔なので平坦なところは頂上部分だけで他は全て急勾配のスロープで構成されている。
スロープ上で絵を鑑賞する美術館はフランクロイドライトのグッゲンハイム美術館が有名だが、中央に大きなトップライトを持つ吹き抜けのスロープで絵を鑑賞する方法を取っている。この美術館には行ったことがあるが、緩やかなスロープとはいえ水平でない床の上で絵を鑑賞するのは少し違和感を感じた。
今回の計画は絵を水平な床の上で鑑賞できるようにcubeをスキップフロア状に配置し、スキップフロアを二重らせんにすることで鑑賞動線が交差しないように計画した。
フロアを結ぶスロープは中心のアトリウムに設置され1フロアを見終わった後で長いスロープを歩くことでの気分転換もしくは口直しができるようになっている。 またアトリウムは自然光が入るようにトップライトとカーテンウォールで外皮が構成されている。
1層は18m×18mの正方形平面で天井高さは3m。フロア中央に円形の柱を持ったラーメン構造で、床は正方形に配置されたグリッド梁で構成されていて、天井は無くグリッド梁が見える計画としている。
実際に計画する場合は、4つのブロックの構造がガラスのカーテンウォールとスロープでつながれた構造となるので、地震時のゆれに対するカーテンウォールの追従性が難問となるだろう。
計画地の想定は郊外の林の中で周りの木をできるだけ残した配置としている。
博物館は人類のDNAとして、歴史を保存し未来に価値ある情報を伝達するための展示物を保管する建物であり、その構造が二重らせんになっていることは象徴的であると思う。
外観俯瞰
エントランス
5階展示室からアトリウムを望む
アトリウム見上げ
エントランスホール
アトリウムスロープ
2階展示室
2009年5月2日土曜日
光芒
冬の正午近く、朝から降っていた雨が止み雲間から太陽がのぞいている。大気は急激に暖められたため薄い霧が発生し、礼拝堂内部にも入り込んでいる。
上記のような条件を想定した時、ロンシャン礼拝堂の内部に光芒が見えることがないだろうか?