2011年10月22日土曜日

cube住宅編

cubeをもとに住宅を設計してみた。(2008年作成)

空間構成の方法は、小空間を繋いで構成する方法と、大空間を分割して構成する方法の2種類がある。この二つの方法は、空間を構成する建築構造と密接に関係している。
組石造から発展してきた西洋の建築は、基本的に壁がないと成り立たない構造形式で必然的に空間は構造的に分割されて作られる。これに反して、和風の軸組み工法は、柱と梁で構成され壁は基本的には必要がないため、大きな空間を必要な大きさに襖や障子で仕切っていく。


コルビジュエのドミノシステム(スラブ、柱、階段のみが建築の主要要素だとするシステム)は、新しい構造形式として組石造を基本として発達した西洋では画期的だが、日本建築では当たり前の空間だった。
組石造は壁自体が構造体であるため開口を作るのが難しい。逆に、和風の軸組みは非常に開放的な空間になりやすい。これは乾燥したヨーロッパと多湿の日本という気候風土によるところも多いが、ないものねだりの結果、西洋建築は光を欲し、和風は闇を欲する様になる。したがって、西洋では光をデザインしたがり、和風では闇をデザインしたがることになる。光のデザインとは、壮大なゴシック建築の中に光を取り入れるステンドグラスであり、闇のデザインとは、谷崎潤一郎の随筆 陰翳礼讃に記述がある日本の心象風景ということになる。

上空からの絵。原っぱの真ん中に建っておりこの建物に降り注ぐ光をさえぎるものは何もない。cubeを単位空間として壁構造で部屋ごとに立体が独立した平屋の住居を考えてみた。


部に向かってはあまり開口部を設けず、中庭(パティオ)から採光する構成にし、影を作り出せる空間とした。

中庭はオレンジの木が一本生えている。仕上げは素材のまま打ち放し。パティオからの光は眩しいが、インテリアは影のある空間になる。灼熱の真夏の太陽をさえぎるインテリアがシェルターとして機能する。






次の計画のテーマは重層化。設定は寒冷地。
熱損失を抑えるため外壁面積を少なくする必要からである。



形態に変化を持たせるため、居間は吹き抜けとし勾配屋根を設けている。

冬景色はこうなる。


1階平面


2階平面


ダイニング

リビング




次の計画は大空間分割タイプ。

プラン


開放的な外観とすることでインテリアに光が満ち溢れているが、逆に影がほしくなる。ここまで来るとシェルターとしての機能は果たせない。(水上の住宅 参照)















cube project


cube project  ある単位空間から始めて、空間があたかも細胞分裂の様に、プリミティブな形態から分節や分割を繰り返し、それぞれの空間が機能を持って展開する様を自分なりのイメージでビジュアルに再現してみた。

この舞台設定は、荒野、そのままでは人が生活できない脅威となる自然環境ではあるが限定された生命は存在する。ここで人を守れる最小の空間としてcubeを考えた。CG作成の練習的意味も含まれているので、いろいろなアングルを季節や気候を織り込みイメージを作成している(2008年作成)


立ち枯れの樹木が散在する干からびた大地。その中で唯一の生命であるガジュマルの木が一本大きな枝を張って存在している。
キューブとはそんな世界で自然の脅威から身を守る最小限の空間でありシェルター。


キューブは27㎥=3m×3m×3mの空間で人間一人が保護される最低限の大きさ。
その内部は、出入り口と外部の影響を最小限に抑える小さな窓一つの空間。窓から少し離れると外部の様子はわからないが日中の最低限の採光は確保できる。


キューブは分節された空間要素(ノード)として位置づけられる。また、キューブを横に長く引き伸ばし廊下状にするとノードをつなぐリンクとして機能する。


リンクからはスリットを通して外部が覗ける。


それらを複合し増殖させることで新たな空間が生まれる。それをここでは、Cube Complexと名づける事にする。プリミティブなまとまりのない段階での複合体は、建築自体に空間の魅力はないが、建築によって作られる外部空間は結界を形成し整備される事によって内部に先立って空間としての魅力を出しつつある。


細胞分裂するがごとく、cubeという単位空間は増殖する。


増殖するに従って機能分化し、形態もそれに合わせ変化する。

晴れの空間として大きな開口を有するようになるものもあれば、
卦の空間として壁で囲まれ曲り屋のように外部から分からないような空間もある。





あるものは部屋を形作りあるものは廊下になる。


やがて規模が大きくなり機能が複雑になってくると同時に分節も複雑で同時に秩序だってくる。

さまざまなユニットが複合されて一つの構成が生まれてくる。
周辺環境も建物に合わせて整備される。最初は、荒野だった敷地も緑豊かに変化する。





中世では神は存在すると同時に外では怪物や魑魅魍魎が跋扈すると信じられていた。そこで生きていくことが神から与えられた試練であり、建物はその試練から身を守ってくれるシェルターであった。そのため神のための空間である教会は異常に発展しゴシック様式の大聖堂が幾つも建てられた時代である。もっとも、神のためのはずがだんだん教会の権威の象徴となってきてしまったが。
存在することの苦しみから解放されようと教会を訪れる人に対し、神の存在を暗示できる演出が施された空間が必要であり、その演出として利用されたのが光であることは容易に想像がつく。もともと西洋では組石造で開口部が少なく光を建築内部に取り入れることが難しいため、光に対する憧れが強い。荘厳なステンドグラスのバラ窓やドーム建築の頂部からの天空光を取り入れることができる高い建物は寄進や寄付による潤沢な予算で建設される教会でこそ可能であったに違いない。
Cube Projectで建築の原点であるシェルターを再現することから始めて光を演出した様々な建築をビジュアル化してみたかった。現代では怪物や魑魅魍魎の代わりに、環境に対する負荷やエネルギーロスが建築や人にとっての脅威になっている。

だが、自然の脅威は突然襲ってくる。



時には洪水に見舞われることもある。

嵐の過ぎ去った後も洪水は残る。


自然の脅威から身を守ってくれるシェルターとしての機能は規模や形態の複雑さにかかわらず必要条件となる。