天井のボールトの形状をサイクロイド曲線、半円形、フラット、放物線にし、壁面と床面の照度を比較してみた。 時刻と場所は、2010年6月21日12:00pmのテキサス州フォートワースで設定した。
下表が結果である
表中色が付いている数字は太陽光での計算である。黒文字は参考で放物線の焦点にライン光源を置いた場合とフラットとの照度の違いを比較した数字である。
計算の条件は、ボールト天井以外は無反射の黒い壁と床で、トップライトから入る光線以外は光源がなく、周囲の壁や床の間接光もない状態で計算した。
サイクロイド天井
ボールト天井面がかなり均一に光っているが、これは真上から差し込んだ光が放物線状の反射板で反射されボールト面に均一に広がっている事によることは前回までのシミュレーションで解っている。
今回は、このサイクロイド形状で反射された光が床面や壁面に到達するときに美術館として何か工夫があるかどうかを調べることが目的だった。たとえば、床面はそんなに明るくなくても壁面は均一に明るさが保てるとか?
シリンダー天井の場合
フラット天井の場合
こうしてみると、フラットは天井の光り方が不均一でサイクロイドやシリンダーに比べて違和感はある。
肝心の照度については少し面白い結果になった。あまり大差はないが、シリンダーのほうが床面照度が高かった。天井が高い分床面は照度は落ちると思ったが、サイクロイド(172lx)シリンダー(201lx)だった。 逆に壁面の照度はサイクロイドのほうが高かった。(サイクロイド東側壁面141lx 西側壁面155lxシリンダー東側壁面103lx西側壁面138lx)
参考に行った人工光線のシミュレーションでも面白い結果が得られている。これは放物線の焦点に人工光を置いたシミュレーションだが、かなり床面がフラットの比べて明るいが壁面は逆になっている。
放物線床面平均照度194lxフラットの床面平均照度163lx
放物線の焦点にライン上の人工照明を置いた場合の放物線の天井の光り方
(中央の黒いラインが下面に反射板を設けたライン照明)
結果を考察すると、放物線は焦点からでた光は平行光線となる事が知られているが、これを究極としてサイクロイドからシリンダー 放物線とだんだん縦長にボールトになればなるほど、床面が明るく壁面に光がいかなくなるけいこうがあるようだ。
美術館の場合は、展示品が壁に掛けられていることが多く、ここに光をあてるためには縦長の形状よりできるだけ扁平な形状が向いていることが分かる。
キンベルの場合、サイクロイドを採用した理由はあまり述べられていないが、単にあまり天井高さを高くせずヒューマンなスケールの空間を目指しただけではなく美術品への光の当り方も考慮された結果だったのではないだろうか?
ここで行った照度計算はソフトまかせのブラックボックスでありアルゴリズムも一切わからない。また一方複雑な間接光を含めた計算であり手計算で無理ではある。結果が正確かどうかは検証しようがないため信じるほかないが、直観的には合ってるように思える。